ネタバレなしでは語れない

映画大好き。感想はネタバレしないと語れないので、思いっきり結末にふれています。

マギーズ・プラン~幸せのあとしまつ

マギーが登場人物たちと結ぶ関係が、枠に囚われていなくて居心地がよかった。

略奪した不倫相手の元妻(ジョーゼット)とか、恋愛が半年以上続かないマギーが2年続いた元彼(トニー)とか、その元彼の妻で職場の同僚の親友(フェリシア)とか。文字だけで見ると、どろどろしてそうだし、いい関係が築けているとしても、そうなった特別な「理由」なんかを求めてしまうのだけど、マギーが彼らと結ぶ関係はサラリと描かれていて、当然のように映画の中に存在している。それがいい。関係性の名称に囚われない、マギーとその人だけの関係性。

恋愛が長続きしないマギーは、結婚はいいから子供がほしいと、大学の同級生に精子だけを提供してもらう。
その頃、同じ職場に勤めるジョンと出会う。ジョンの妻・ジョーゼットはコロンビア大学の教授として忙しく働き、ジョン自身は小説を書くために非常勤で勤め、家では家事を担う。
そして、ジョンからそこはかとなく漂う「ダメ男」の空気。
ツイッターで「ジョンの食べ方が子供っぽい」のがその理由と書かれているのを読んで納得した。そう、食べ方とか座り方とか、ジョンは確かに子供っぽい。見ているときはそこまではっきりとは思わなかったけど、マギー、この人は苦労するよーって思っていた。このあたり、作りが上手いですね。
案の定、子供の世話(ジョーゼットとの間の2人の子供も)も、家事も、仕事もしなくなって、全部マギーがやることに。ジョンは書き終わらない小説をだらだらと書き続ける。
そんな生活に嫌気がさしてきたマギーは、ある日、ジョーゼットの本の出版のお祝いの会に参加。その本は自分達の不倫の話が書かれている。夫に不倫されて捨てられたのに、それを本にしてしまうジョーゼットのたくましさ。転んでもただでは起きない感じが好きですね。
ジョーゼットと話したマギーは、彼女がまだジョンのことを好きだと確信。なら、ジョンを彼女の元に返そうと、工作を図る。これをトニーに相談すると、案の定怒られる。
この後、その工作がジョンにばれて、ジョンは家を出ていく。

ジョンへの工作がジョーゼットもかんでいたと知ったジョンが、ジョーゼットの家を出た後のこと。ジョーゼットと子供2人がマギーの家に来る。そのまま一緒に住んじゃえばいいのにと思った。
マギーとジョーゼットの関係は、普通に考えたらいがみあって当然の仲なのに、映画で描かれる関係が当然のことのように思える。この二人は互いに好感を持っているんだよね。それは、共犯者意識も働いているように思うのだけれど。
キッチンで自分のしてしまったことに悩むマギーに、ジョーゼットがタッピング療法を教えてくれるシーンが好き。「コントロールしたくない」と言いながら、額を、肩を、体のあちこちをタッピングしていく。その言葉を染み込ませるように。ジョーゼットもこうやって辛い時や悲しい時を乗り越えてきたんだなと思った。
この時、マギーが「正直に生きたい」と本音をもらす。

マギーのしたことは自分勝手だと思う。でも、不思議と応援したくなる。「正直に生きたい」と言う彼女は、自分の幸せを自分で決めて、批判も、怒られるのも、後ろめたさも受け止めながら、行動する。その姿が清々しい。

正直に生きることは、きっと思っているよりも大変で、そんなにいいものじゃないのかもしれない。傍から見たらわがままで、自分勝手な行動だし、誰かを傷つけている。それに気が付いて自己嫌悪にも陥る。でも、正直に生きなければ手に入らないものがあるなら、全部引きうけて行動するしかないんだよね。


マギー、あなたの生き方が好きだよ。