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ネタバレなしでは語れない

映画大好き。感想はネタバレしないと語れないので、思いっきり結末にふれています。

何者

何者と永い言い訳。自意識過剰で、少し性格が悪くないと、響かない作品かもしれないとの感想を読んだ。両方とも響きました、えぐられました。

烏丸ギンジに向けた拓人の言葉「頑張ってるところを人に見せるのはまだ何者でもないから」は、拓人が頑張ってるところを、みっともないところを人に見せない理由だ。それは、まだ何者でもないことが周りにばれるのが怖いから、自分で認めるのが怖いから。

拓人と理香って似てるなと思いながら見てた。対極にいるのが、光太郎と瑞月。拓人は光太郎の内定先を小さいところだと影で笑い、梨花は瑞月のそれをブラックで検索をかける。拓人は人を見下すことで、理香は頑張ってることをアピールすることで、かろうじて自分を保っていた。やってることは逆でも同じ。誰かと比較しないと自分のプライドを保てない。
演劇関係は食べていけないから受けないと言いながらそこの面接を受ける拓人。名前のあるところより即戦力としてすぐ働けるとことがいいと言いながら大手を受ける理香。

拓人に向けた言葉じゃないけど、瑞月の「10点でも20点でもいいから出しなよ」は拓人にも響いたと思う。自意識過剰人間には、これが難しい。
でも、瑞月の言うように「出してみないと点数なんてつかない」のだ。出してみたら案外よかったということは少ないのだけど、出してみたらどう改善すればいいかがわかったということは、よくある。それの繰り返しで成長していくしかないのだけれど、そんなに頑張ってなんかいませんよって顔して内定が欲しいって、なんでなんだろうね。と思わず自問自答してしまうほど、拓人の中に自分を見てしまう。

理香に秘密にしていたツイッターのアカウントがばれて、どうせ裏で人のこと笑ってたんでしょと言われる。そこに隆良が帰ってくる。
隆良が就活をはじめようと思うから色々教えてほしいと拓人に頼んでくる。「二回目なんだから詳しいだろう」と。ここで拓人が就活浪人をしていたことが分かる。きっと、拓人が一番隠していたかったこと。
理香の部屋を出た拓人は瑞月のバイト先へ。そこで瑞月は、「拓人君の書く舞台好きだったよ」と言う。拓人が学生時代に頑張っていたこと。そして、多分一番みっともなかった姿。なぜみっともなかったかというと、やっている最中は人にどう思われるかを考えていなかったから。自分がやりたいからやる。それだけで動いていた時間。

理香と隆良にみっともない自分がばれて、瑞月にみっともない自分を肯定してもらった。他人に引きはがされたプライド。でも、そのむき身の自分を好きだといってもらえたことで、拓人は救われる。
何者に答えを出すには、必要な行程だったのかもしれない。

そうして迎えた面接。面接は140文字のツイートのようなもの。簡潔に相手に伝わるように。と言っていた拓人が、ラストの面接では自分を1分では表現できないという、人はもっと複雑なのだ。140文字に収めようとするがために、目を背けて、あえて表現しない部分が逆に露わになってくる。それに拓人は向き合い始めた。
先輩のツイッターの画面だけで分かった気になっているなよという言葉とも重なってくる。画面ではなく人と、画面ではなく自分と。

ラストは拓人が面接を受けた会社から出ていく場面のバックショット。出た途端、それまで聞こえていなかった雑踏の音が聞こえてくる。ぱぁっと画面が明るくなる。その中に踏み出していく拓人。予告で使われていたもので、そこで見たときは、「はじまり」を感じさせた。ラストで見ても同じ、ここからが拓人のはじまりなのだ。