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ネタバレなしでは語れない

映画大好き。感想はネタバレしないと語れないので、思いっきり結末にふれています。

高慢と偏見とゾンビ

映画

こういう恋愛映画が見たかった。
作中で一番ロマンチックに見えた場面は、エリザベスとダーシーが、地面から湧き出てくるゾンビを二人で刺すシーンだった。エリザベスは恋をしても武器を捨てることはしない。
この、武器を自らが持つこと、その武器を男性に恋をしたからといった理由で捨てないことがこの映画最大の素晴らしいところだと思った。

古典的恋愛小説の名作「高慢と偏見」が、ゾンビがはびこる世界を舞台に展開されると聞いて、なんだ、それ、と正直見る前は思いましたよ。
ところが、紛れもなく描かれているのは「高慢と偏見」の世界。とんでも設定かと思いきや、とんでも設定なんだけど、しっかりと「高慢と偏見」の感情の揺れ動きや、プライドゆえに素直に相手を見られないところが描かれていて、それが何の違和感もなくゾンビの世界で繰り広げられている。見事な融合。
それが一発でわかるように描かれていたのがベネット家5人姉妹登場のシーン。まず、ここでやられた。だって、皆して銃を磨きあげているんだもん。そこに母親が、隣に金持ちの独身男性ビングリーが引っ越してきたと喜びながら入ってくる。彼も参加する舞踏会に行くためコルセットを締めあげ、ドレスに着替える5人。ガーターに武器を仕込むシーンのかっこよさと美しさ。
小説「高慢と偏見」に描かれている18世紀イギリスの価値観、女性は結婚する以外生きていく道はないのだからできるだけ金持ちをつかまえる、と、ゾンビのはびこる世界で生きるための価値観、自分と大切な人を守るため女性も武道を身につける、という2つの価値観が見事に融合された、映画の世界観に一気に引き込まれたシーンだった。

舞踏会で一目で恋に落ちる5人姉妹の長女ジェインとビングリービングリーの友人ダーシーは、舞踏会に男目当てで来る女性陣がお気に召さない様子で、エリザベスのことを「たいして美しくもない」と言ってしまい、それを聞いてしまい落ち込むエリザベス。
そこに大量に入り込んでくるゾンビ。ドレスの下に仕込んだ武器で、身につけた武道で、バッタバッタとゾンビを倒していく5人姉妹。
それを見ているダーシーの目、完全に墜ちてます。恋に。私も。
5人姉妹なら、エリザベスだけが強いのかと思うでしょう、ところが5人とも強い。この設定に拍手。舞踏会終わった後、姉妹で彼、どうだったーって話が始まるんだけど、それが訓練しながらで、笑った。拳や蹴りを受けながら、吹っ飛ばされながら、「あんな高慢な男見たことない」って、ダーシーのこと報告するエリザベス。いや、普通に座って話せよ。

闘うエリザベスを見て恋に落ちるダーシー。ビングリーもジェインのその姿を見ているが、それが原因で気持ちが冷めることはない。
ダーシーが嫌うのは、5人姉妹の母親の価値観の方だ。ジェインをビングリーに嫁がせるのは、彼が金持ちだからだと言うのを聞いたダーシーは、ビングリーにジェインはふさわしくないと、二人の仲を引き裂く。
18世紀の価値観を生きる人物がもう一人、5人姉妹の従兄で、ベネット家の相続人、コリンズだ。彼はエリザベスにプロポーズする際、もうゾンビと闘うのはやめてほしいと言う。それは、結婚したら仕事を辞めてほしいとか、働き続けてほしい(けど、家のことはちゃんとやってね)とか言う現代でも聞く話のよう。話し合いはするかもしれないが、結婚後に仕事を続けるか辞めるか、ゾンビを倒し続けるかを決めるのは、結婚相手の男性ではなく、彼女自身なのだ。
コリンズの申出を断ったリザに、母親はこう言う。「私はどうやって生きていけばいいの」と。女性に財産の相続権がなかった時代、女性が生きるには金持ちの相手と結婚するしかなかった。その価値観で生きてきた母親が、こう憤るのも当然。
ところで、このコリンズが、ひと目見ただけでいけ好かないキャラというのが伝わってきて、役作りに拍手。

作中笑ってしまったシーンも多い。
隣の女性も笑っていたのが、エリザベスが死肉ハエを素手で捕まえるシーン。
ビングリー家へ向かう途中、ゾンビと遭遇したジェインは戦いの末ゾンビを負かすが、熱を出してビングリー家で倒れてしまう。ジェインのゾンビ感染を疑うダーシーは、こっそりと、ゾンビを見分ける能力を持つ死肉ハエを放つ。見舞いに来たエリザベスは、姉の身を心配しながらも、空中で素早くハエをキャッチ。見ることもなく、つまり音だけでハエを追って、一発でしとめる。全部取った後、握りつぶしてダーシーに返す。って何このシーン、書いてておかしいわ。
エリザベスはダーシーがハエを放つシーンを見ていないから、気配で感じたんだろうね。こういうとこにも、ダーシーは惚れちゃったんだろうね。もちろん私もね。

ダーシーはついにエリザベスにプロポーズ。からの、闘いのシーンもおもしろかった。何故この場面で闘う。でも、エリザベスはダーシーのベストを割き、ダーシーもエリザベスの胸元を切る、というシーンで納得。2人は闘うことで気持ちを確かめあっているのだ。文字通り胸襟を開いて。
プロポーズが失敗に終わった後、ダーシーは日本刀で植木に切りかかる。エリザベスもコリンズからの求婚後、むしゃくしゃした気持ちを剣を振り回すことで解消している。この二人、似た者同士ですね。
ちなみに、金持ちのダーシーやビングリーとその妹たちは日本で修業し、そこまででもないベネット家は中国で修業したという設定。細かいけど、身分の差を表していて面白い。

笑えるシーンやとんでもなシーン見ても、2人の恋愛に結び付けてしまうほど、物語に入りこめたのは、小説「高慢と偏見」と、組み合わせた舞台の世界観が同じ熱量で描かれていたからだと思う。ただの設定に陥ってなくて、きちんと物語の中に組み込まれているのがよかった。
感想の中で、ダーシーがエリザベスに墜ちる瞬間、私も墜ちてると書いてるが、これは、エリザベスに墜ちるのはもちろん、それ以上に作品に墜ちているということです。

そして、物語はクライマックスへ。コリンズと結婚すると言いだしたエリザベスの妹は、ウィカムにそそのかされ、ゾンビの集う教会へと連れ去られてしまう。
ウィカムについては、割愛。
妹を助けに向かうエリザベスとジェイン。ゾンビのいる地域へかかる橋は、時間になったら爆破されることになっており、時間はない。その途中、ゾンビに襲われているダーシーをエリザベスが助け、最初に書いた二人で地面から湧き出るゾンビを刺すシーンが出てくる。
ダメ押しで、ゾンビ化したウィカムに襲われ、ダーシーあわやという時、表れるのは白馬に乗ったエリザベス。なんだよ、王子かよ。
妹も無事で、エリザベス&ダーシー、ビングリー&ジェインの結婚式でラストと、思ったら、エンドロール途中で切れて、ゾンビが向かってくる。この、ラストもらしくて好きだった。